【意見表明】2019.12.13 府市港湾管理の一元化

レポート 要望

【府市港湾管理の一元化】
本来は、港湾事業については、国が戦略的に取り組まなければ国際競争力を高めることはできない。各自治体任せでチグハグな港湾事業を行うことにもなりかねない、この度、大阪市会に上程された2つの案件について、自民大阪市議団は反対をし、討論をさせて頂きました。

また、反対?
昨日(12日)の本会議に関して言えば、2/36の反対です。36本の案件(意見書案2件含む)があり、府市港湾管理の一元化関連の2案件についてのみ反対をしただけであることを強く報告させて頂きます。
逆に、なんでもかんでも賛成の議会であるとするならば、そんな議会はいりません。議会の機能を果たしていないと指摘されてもおかしくないと考えます。
是非、何故「反対」という結論に至ったのか、会派を代表しての山本長助議員の討論の全文をご覧頂ければ幸いです。

≪山本長助議員(港区選出)討論≫

私は自由民主党市民クラブ大阪市会議員団を代表して、議案186号「大阪市事務分掌条例の一部改正」、議案187号「大阪港湾局の共同設置に関する協議」いわゆる府市港湾局の一元化に関して、反対の立場から討論させて頂きます。

大阪港は、国策として神戸港とともに阪神港として国際コンテナ戦略港湾に指定されており、阪神港への集貨施作や、世界各国を結ぶ基幹航路の維持拡大を図ることで、国際競争力を強化し、利用者のニーズにあったより使いやすい港として、更なる選択される港を目指さなければならないことは言うまでもありません。
しかし、こうした広域的な視点に立った港湾政策は、全く役割の異なる府・市港湾を一元化により進めるのではなく、連携協約により、進めていくべきことをまず最初に申し上げておきます。

以下、本議案に反対の理由として6点申し上げます。

まず1点目として、統合目的についてであります。
これが、あまりにもいい加減であります。
委員会質疑の中で、そもそも府市の港湾が二重行政であるのかどうか、さらには二重行政解消のための統合なのかとの質疑に対して、港湾局は二重行政の解消とは明言せず単なる広域一元化のためとの答弁でありました。一方、同委員会にて副首都推進局に同じ質問をしたところ、「大阪都市圏全体として最適になっていない状態」で二重行政であり、その解消のためと、それぞれ全く異なる答弁でありました。
当たり前ですが府市の港湾は二重行政ではありません。
港湾管理者も違い、港の区域といわゆる港格も異なっており、機能も役割も違います。どれをとっても二重行政の条件にあてはまりません。
もしこれが二重行政なら、日本中の港が二重行政となってしまいますし、「大阪都市圏全体として最適になっていない状態」が二重行政であれば、府内の基礎自治体はなくなってしまいます。
統合目的にかんして港湾局は広域行政の一元化ととらえ、大阪市廃止分割を進めている副首都推進局は二重行政の解消としています。
同じ大阪市でありながら、統一した見解や認識を持たない答弁がされる中、今回の議案が提出されていることに、統合ありき、一元化ありきのあまりにもいい加減な統合目的だ、と言わざるをえません。

2点目ですが、府市統合のメリットに関してであります。
先日府営港湾を視察させていただきましたが、確認すると府営港湾8港のうち、大阪港と同様に外貿貨物を取り扱っている港は2港で、府営港湾のガントリークレーンは2基しかなく取り扱う貨物量も3万TEU、一方大阪港は23基で取扱貨物が210万TEUとコンテナの取り扱いの個数も規模も明らかに違っております。
また、国、神戸市とともに国際コンテナ戦略港湾として集貨や創貨に取り組む大阪港と、レクレーション施設を含むバラエティーに富む府営港湾とは、機能も役割も全く違う港でありました。
(そもそも、ガントリークレーンの維持費は高く、しかも府営港湾では昨年度はコンテナ船が126隻しか入港していないそうないので、3日に1度しか船が入港していない状態です。)
この全く違う機能・役割をもつ府市港湾の一元化のメリットに対する理事者の説明は、「事務の一体化を図り広域的な視点による施策が可能になること」、「荷主等の利用者ニーズに幅広く対応すること」、「一人の港湾局長がマネジメントすることで取り組みがスムーズになること」等ありましたが、確認するとどれも今の連携協約で足りるものであり、メリットといえるようなものではありませんでした。
逆に、事務の一体化をはかることで、役割も機能も違う港をそれぞれ把握することになり却って事務量が増大し、府市に1人ずついた局長も一人になることで、判断する案件は当然増えることから意思決定に時間がかかります。港湾局長も一人になることで、府市それぞれの議会と委員会に出席するという負担をおい、特に大阪港にとっては意思決定が大きく遅れ事務の負担が増大することは明白であります。

3点目には、危機管理の側面に関しても、災害時の指揮命令が知事・市長両方から局長へなされる点、また、大阪市の港湾局長が府営港湾のエリアまで自分で判断することが本当にできるのか、不安な点ばかりであります。

4点目に、行政改革の側面においても、効果が発現することもなく却って府のイニシャルコストに1億円超のコストがかかるということでありました。
以上のように、もともと役割と機能、そして管理者が違う港ということから、それぞれの強みや弱みを活かすためには連携協約で十分ということで、平成28年の提案時には連携協約でとどまっていたはずであります。
それを無理に組織を一元化することで、かえって意思決定が遅れ、危機管理にも大いに不安が生じ、メリットもほとんどなく、行革効果もなく逆にイニシャルコストがかかり、デメリットばかり生じる統合内容となりはててしまっています。

5点目として、府市港湾の統合について目的・内容にメリットがでないことが明らかな中で、大阪市、大阪府、神戸市、兵庫県の4港湾諸港の一元化を最終目標としていること自体、問題であります。
今回も府市港湾の統合について、国、神戸市の理解が得られなかったそうですが、そんな状況で大阪港そのものの将来が不安でなりません。
このことに対して、理事者の説明では、国際コンテナ戦略港湾施作と府市港湾局を1つにすることは、いずれも車の両輪として取り組んでいくとの回答でした。
しかし国は国策として大阪港を、神戸港とともに阪神港として国際コンテナ戦略港湾として選定しています。そのことによって国の補助率が高いといった制度の適応がされていす。
阪神港への集貨施作や、北米・ヨーロッパを結ぶ基幹航路の維持拡大を図ることで、台頭するアジア諸港はじめ世界の港に遅れをとらない国際競争力を強化し、利用者のニーズにあったより使いやすい港、選択される港を目指すことが大阪港には求められています。
6年後には国家事業である万博を控え、IRも決まれば同時開業を目指すとする方針の中、港湾局に府市港湾を立ち上げていく余裕があるのでしょうか。
国の理解を得られない中、メリットのない府市港湾の一元化を進めることは本末転倒であります。

6点目ですが、来年の秋から年末にかけて、大阪市廃止のための住民投票を行うスケジュールのもと、今このメリットのない府市の港湾局の統合を進める必要はあるのでしょうか。
他会派の反対質疑にもあったように、もし来年の住民投票で大阪市の存続がきまれば、どうやってもとに戻すんでしょうか。またどれくらい時間がかかるんでしょうか。
来年の住民投票の結果がでてからでもいいのではないでしょうか。
改革の名のもとに、港湾行政を貶める、あまりにも政治的な議案であります。本気で府市港湾の一元化を目指すなら、なぜ行政委員会をなくし組織統合だけにしたのでしょうか。
取り下げ含め、過去に3回否決された議案と違うのは、行政委員会がなくなったことと、今の政治状況だけであります。
今回の府市港湾一元化は、住民投票前の中途半端なアリバイ工作でしかありません。

以上の理由から、本議案に対して明確に「反対」と申し上げます。

縷々申し上げましたが、重ねて申し上げす。
冒頭もうしたとおり府市港湾は二重行政でも何でもありません。
副首都推進局の定義した二重行政の解消という形にだけこだわり、中身もなく、統合効果も名ばかりで、スケールメリットも何もない。逆に意思決定が遅れスピード感に欠け、無駄なコストを生むだけであります。
港だったら何でもくっつける、大きければいい、意思決定が一元化できればいいという発想は、昭和の発想で時代遅れであります。
多様性にとみ、高度で専門的でスピード感が必要な令和の時代には、あまりにも古い考え方であります。
夢洲の渋滞対策や国際コンテナ戦略港湾としての集貨・創貨への取組といった目前の課題のある中、大阪港湾局を設置することを進めれば、荷主や港湾事業者、国、神戸市はじめ多くの人の信頼を失います。

大阪港は万博の予定地である夢洲周辺が今でさえ渋滞している状態であります。工事が本格的に始まって工事車両が増えることによって、コンテナが逃げてしまわないか、港湾関連の事業者は本当に心配しております。
集貨や創貨を港湾局の運営方針の一番目に掲げるなら、世界の主要港とのネットワークを構築するためのツールである国際港湾協会を脱退したことは間違いであり、24時間のフルオープン化や、コンテナ船の大型化、物流拠点の夢洲の渋滞解消の解決に全力で取り組むべきであり、府市港湾の一元化を進めても全く課題解決にもなっていません。
大阪港は近代港として150年、またその昔から大阪をはじめ関西経済のけん引役として多くの先人たちが築き上げた港であります。今一度物流機能の強化といった原点にたちかえるべきであります。

以上縷々申し上げましたが、
大阪港のはたしてきた重要な役割、また、万博を迎えるにあたって果たすべき重要な役割に鑑み、政局で判断するのではなく、大阪の将来を見通す慎重な判断のもと、ぜひとも議員各位には良識ある正しい判断が下されることを祈念し、私の反対討論とさせて頂きます。

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最後まで目を通して頂き、ありがとうございました!
引き続き、自民大阪市議団は真の大阪市・大阪の発展のために全力で取組んで参ります。
【令和元年12月12日 本会議討論の報告】 0:00 自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団 山本長助(港区)

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